東都名所 高輪之明月
歌川広重
江戸時代後期の浮世絵師・歌川(安藤)広重が、作品の中で多用した空と海を表す青色は、ヒロシゲブルーとして広く知られています。
ただ、いま多くの人が青やブルーと聞くと、サッカー日本代表のユニフォームであるサムライブルーを思い浮かべるかもしれません。
ただ、いま多くの人が青やブルーと聞くと、サッカー日本代表のユニフォームであるサムライブルーを思い浮かべるかもしれません。
サッカー日本代表のユニフォームが、なぜ青に決定したかは諸説ありますが、ひと昔前の某巨大掲示板では、「日本の伝統色は断じて青ではない」「イタリアと紛らわしいから変えろ」などと喧々諤々と議論されていました。
そんな中で、日本の色として多くの票を集めていたのが「紫」でした。その理由は、
- 聖徳太子が制定した冠位十二階において、最上位の大徳の色として用いられている
- 作者である紫式部の名の通り、日本の古典文学「源氏物語」の作中に頻繁に登場する
- 江戸紫という言葉がある
などであり、「紫」こそが日本の色に相応しいとの声が多くありました。
また、日本の伝統的な調味料、醤油(Soy sauce)も別名は「むらさき」です。
このように日本の歴史を紐解くと、紫が伝統色であり、この馴染み深い色を代表のユニフォームにすべきだとの声が多く聞かれました。
日本の新たなシンボルとなった東京スカイツリーも、通常のライティングデザインに江戸紫をイメージした「雅」を用いているように、日本のカラーは紫だと感じている人は多いかもしれません。
ただサッカー日本代表のユニフォームは、今はもうサムライブルーが定着し、青が海と空に囲まれた日本の国土を表す色として国民に広く認識されているようです。
今後代表のユニフォームがどうのような変遷を辿るかは分かりませんが、数々の激闘や感動を生んできた色鮮やかなサムライブルーのユニフォームは、多くのファンの目に焼き付いていることでしょう。
この無限に広がる空と海を表す爽やかな青は、絵画や映画で象徴的に用いられ、特に有名なのが冒頭で述べた浮世絵師・歌川広重の広重ブルーです。
この無限に広がる空と海を表す爽やかな青は、絵画や映画で象徴的に用いられ、特に有名なのが冒頭で述べた浮世絵師・歌川広重の広重ブルーです。
東海道五十三次 品川
著名な風景画「東海道五十三次」を含め、広重作品で多用されたこの鮮やかなブルーは、海を越えてゴッホら印象派の画家たちを魅了し、ジャポニスムとして彼らの作品に影響を与えました。
一方映画では、北野武監督のキタノブルーが良く知られています。
暴力映画が多い北野監督ですが、是非おすすめしたいのは「あの夏、いちばん静かな海」です。
主人公は聾唖(ろうあ)の青年で、サーフィンを舞台にした静かな映画ですが、青が象徴的に使われています。
本作は珠玉の恋愛映画であり、青を背景に映し出される静かな映像美が、久石譲氏の織りなす哀愁のしらべと共に多くの観客の心を捉えました。
また青は爽やかなイメージ以外にも、文化によって違いはありますが、以下のような共通のイメージを感じ取ると思われます。
本作は珠玉の恋愛映画であり、青を背景に映し出される静かな映像美が、久石譲氏の織りなす哀愁のしらべと共に多くの観客の心を捉えました。
また青は爽やかなイメージ以外にも、文化によって違いはありますが、以下のような共通のイメージを感じ取ると思われます。
- 情熱の赤と対比した冷静なイメージ
- 火照った血の赤と対比した、血の気の引くような青冷めたイメージ
- 潤いの水を表す、みずみずしいイメージ
- 悲しみや憂いのイメージ
この悲しみの青を象徴的に表現した絵画があります。
悲しみの聖母
悲しみの聖母
この作品は、イエスの運命を想う母マリアを描いたもので、作者のカルロ・ドルチは、17世紀イタリアのフィレンツェを代表する画家です。
この深みがかった青色に、子を想う親の悲しみと、深い憂いを感じ取れるのは私だけではないと思います。
幕末の志士である吉田松陰は、囚われていた江戸の伝馬町牢屋敷で、処刑から逃れられないことを悟ると、次のような歌を詠みました。
幕末の志士である吉田松陰は、囚われていた江戸の伝馬町牢屋敷で、処刑から逃れられないことを悟ると、次のような歌を詠みました。
親思ふ こころにまさる親ごころ けふの音づれ何ときくらん
意訳
子が親を思う気持ちよりも、親が子を思う気持ちの方が強いはずである。私が処刑されることを知ったら、親はどう思うだろうか。
松陰は独身であり、親の気持ちを知る術がないにも関わらずこのような句を遺せたのは、彼の激情が単なる狂気ではなく、思いやりや優しさに裏打ちされたものであった何よりの証だと思います。
このように、親が子を思う気持ちは人類の普遍的な感情であり、このカルロ・ドルチのマリア像は、母親の愛を端的に表した見事な一枚だと思います。
この絵は上野の国立西洋美術館に展示されていますので、興味のある方は是非ご覧になってみてください。
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