2020/04/01

伝説のYou Tube動画から学んだ動画プロモーションの手法は、テクニックよりも背景にある想いだったかもしれません。



canva 提供者:freestocks.org





1 広報としての動画作成



You Tubeが世に広まり、個人の動画を不特定多数の人に見てもらうことが容易となりました。

それに従い、一般企業も広報の一環として動画を活用し始めました。

そんな状況の中、起業した私も、動画をプロモーション手段として活用すべく、まずは動画広報のイロハを学ぶためにセミナーへ行ってきました。



2 震災で被害を受けた企業が作成した伝説の動画



そのセミナーは、訴求層に応じた内容の違いなど参考になりましたが、その中でも、岩手県盛岡市の企業・東山堂さんが、社運を賭けて作成した動画が心に刺さりました。

そのセミナーのキャッチコピーは、「伝説のYou Tube動画から学ぶ」と銘打っていただけに、その動画は私が知らなかっただけで有名のようでした。

東日本大震災で被害を受けた会社が、後のない捨て身の状況の中、運営する音楽教室への入会を呼びかける動画として作成したとのことでした。



3 社運を賭けて作成した3分半の動画




ご存知ない方は、ここで動画をどうぞと言いたいところですが、オリジナルの動画はなくなってしまったようです。

ともかくとして、ここにその内容を忘備録として、また動画制作に役立てるために記しておきます。



4 視聴者を惹き付ける冒頭の演出



まず動画のはじめに、新郎が新婦に「お父さんピアノ弾けるんだ?」と聞き、「?」を持ってくることで視聴者を惹き付けています。

昨今は、動画に限らずコンテンツが溢れており、初めに興味を持ってもらえなければすぐにスキップされ、視聴者は他へ流れてしまいます。



5 ギャップ法の活用



動画の冒頭に、視聴者に留まってもらうための仕掛けがしてあります。

次に、「一見すると冴えないお父さんがピアノ弾く」という意外性、いわゆるギャップ法を用いています。

ギャップ法とは、「隔たり」とか「落差」を使用することにより、相手に強い印象を残す手法だと私は解釈していますが、ここでは、「冴えないお父さん」と「華やかなピアノ」をクロスさせています。

例えば小説のタイトルだと、三島由紀夫氏の「仮面の告白」や、石原慎太郎氏の「乾いた花」などがあります。

自分を隠すために装着する仮面が告白をする。

瑞々しい象徴である花が乾いている。

これもギャップ法の一例と言えるでしょう。

言葉の芸術である小説は、このような手法が用いられることもあります。



6 家族のストーリー



動画の本編へ戻りますが、娘の結婚式で、「冴えないお父さん」が「華やかなピアノ」を演奏し始めます。

ただし、お世辞にも上手とは言えない音色が流れ、娘の表情の変化とともに、その曲と背後に存在する家族のストーリーが明かされていきます。

このストーリーには、家族の想いが詰まっていることを観ている側は想起させられます。


努力したお父さん。

お父さんのお母さんに対する想い。

在りし日の娘に対するお母さんの想い。

お母さんを失った二人の空虚感。

父親と思春期の娘との確執。

解けていく娘の気持ち。

今も二人を見守っているであろうお母さんの想い。


このような登場人物の想いが、何重奏にも交差して観る者の感情を刺激していきます。



7 テクニックよりも背景にある想い



ただし、これは狙って生み出せるような作品ではないと私は思いました。

このセミナーでも話されていたのですが、311という想定外の地震と津波に襲われ、街中が壊滅的となり、多くの人々が肉親を失い、復興もままならない中で、「必ずやってやる」という想いから動画を制作されたとのことでした。

つまりこの動画には、依頼者の執念や、それに応えた制作者や出演者の信念、もっと言えば、震災で亡くなった方々、震災で身内を亡くした方々、そいういう様々な想いが乗り移って一念となり、この動画を作らせたのではないかと私は思います。


執念・信念・一念


私がこのセミナーで学んだ最も大切なことは、テクニックよりも、動画作成に関わる者たちの気持ち、そしてその背景にある想いが先決である、ということだったのかもしれません。


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