ちょうど一年前に、法務局で法人登記の申請をした。
申請が延び延びとなってしまったが、今日のこの日で良かったと思った。
なぜならその日が、住んでいる街の、小学校の入学式だったからだ。
ピカピカのランドセルを背負う、初々しい子供たちを見て、この日で良かったと思った。
俺は、こういう子供たちのために会社を立ち上げるのだ、決して綺麗事ではなく、そう思った。
ママチャリを漕ぎながら、恵比寿を抜け、代官山を通り過ぎ、途中で立ち漕ぎをしつつ、渋谷へと到着した。
煩雑な手続きを終え、さあこれからだ、と希望に胸を膨らませたかといえば、そうでもなかった。
やることは山積みで、そもそも俺は、遅れてやってきたロートル起業家だ。
ママチャリには電動が備わり、後ろには子供乗せが付いている。
若いハツラツとした起業家とは訳が違う。
それでもこの道を選んだのだ。
偶然か必然か、それは分からない。ただ、新たな道を歩み始めたのだ。
今日、これまでの一年を振り返ってみると、トラブルもあったが、少しは人間として、成長できたのかもしれない、今は従業員もいないが、社長として成長できたのかもしれない、とも思う。
今日もまた、一年前と同じように、ピカピカのランドセルを背負った新一年生を見かけた。
校門の前に立ち、カメラに収まる子供たちを見て、一年前の、俺自身の気持ちと再び向き合った。
桜はもう散った。時間は戻らない。
ただ、少年時代の俺自身に、新たな道を歩み始めていることだけは伝えたい。
「白雲や ところで俺の桶狭間 いつになったら 訪れるらむ」
こんな句を読んだら、今大僧正に、張り倒すぞ、なんて言われるだろうか。
過去を振り返れば、その時その時の、俺なりの桶狭間はあったのだとは思う。
あるときは織田信長、あるときは今川義元。
人生とは、勝ったり負けたり、それは相手であったり、自分であったり。
俺はもう信長のように若くはないが、もしかしたら将来、乾坤一擲の大一番が、訪れるかもしれないし、訪れないかもしれない。
それは分からないが、自分が信じた道を、歩んでいくしかない。
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