2021/01/12

LINEが日本で普及した理由




画像  enase・PIXTA(ピクスタ)



日本におけるスマホのメッセージアプリは、韓国企業NHNの日本法人・NHN Japanが開発した「LINE」が、サービス開始当初から広く使われています。

なぜ、LINEはこれほどまでに日本で普及したのでしょうか。

理由の一つ目は、携帯電話の番号をアドレスとしてメッセージが送れるショートメールで、当初、携帯会社が違うと送受信できなかったことが挙げられます。

LINEがサービスを開始した2011年当時、スマホの普及率は2割前後であり、フィーチャーフォン(ガラケー)は主にキャリアメールでやり取りされていましたが、ショートメールは電話番号を知っているだけで簡単にメッセージが送れたため、重宝していました。

確かにショートメールは送れる文字数が少ないですが、ポケベルで084(おはよー)などと交流していた世代からすると特に問題はなく、ショートメールからキャリアメールへ、もちろん今であれば、ショートメールから別のWebサービスに誘導することも可能です。

しかし当時の日本では、この国際規格であり、ほぼすべての携帯電話に備わり、海外では広く利用されているショートメールが、違うキャリア間において使うことができませんでした。

日本でショートメールのキャリア間通信が可能になったのは、LINEがサービスを開始した2011年6月の直後の2011年7月13日です。

このことによって、日本では海外のようにショートメールが交流手段として広まらず、LINEなどのメッセージアプリが普及する一因となったのは確かだと思われます。

理由の二つ目は、行政の対応です。

例えば、今回のおかしなコロナウイルス騒動での厚労省の調査が、ほぼ誰にでも届くショートメールではなくLINEで行われました。

私のようにLINEを使っていない人間は当然おり、特に高齢者に限って言えばそうだと思われます。

にも関わらず、また緊急だと叫びながら、なぜか多くの人に届くショートメールを使わず、LINEで厚労省のコロナ調査が行わ
れました。

また、ショートメールは開封率が高く、相手に届いたかも確認でき、災害に強い回線を使用しているとされるにも関わらず、なぜか緊急の調査でLINEが使用されたように、ショートメールの特性を無視した行政のおかしな優遇対応も、普及の一因として挙げられると思います。

ショートメールは、イタズラやフィッシング
があるなどと言われますが、それはLINEを含めた他のアプリも同じです。またショートメールは、世界中の企業が本人確認で利用していることから、正しく使えば有効に活用できるはずです。

ただショートメールは、Softbankの場合、auやdocomoと違って送信者の電話番号が表示されず、特定の事業者番号が表示されるため、ソフトバンクの携帯電話を使用している人は、届いたメッセージが不審なものに見えてしまうのは確かかもしれません。

理由の三つ目は、他の日本製アプリが振るわなかったことが挙げられます。

DeNAの「comm」は2012年10月にサービスを開始し、その年の12月に累計500万ダウンロードを突破していますが、なぜか2015年4月にサービスを終了しています。

GREEの「GREE Messenger」は2013年2月にサービスを開始し、途中に「Tellit」と名称を変え、さあこれからという時に、わずか7ヶ月という短期間でサービスを終了しています。

2004年に国産SNSとしてサービスを開始したmixiは、2008年7月の時点で1500万人もの会員が存在しており、LINEよりも有利な立場にいました。

mixiはスマホへの対応が失敗したなどと言われていますが、2008年にiOS版、2010年にAndroid版を出しており、2013年の公式発表では、1,000万を超えるユーザーが存在していました。

ただ、2013年に創業者の笠原健治氏が社長から会長に退き、その後を継いだ朝倉祐介社長はわずか一年で代表を退いており、その後を継いだ森田仁基氏は後に商標法違反の容疑で書類送検されているように、社内では色々あったようです。

それでも、2013年にスマホで1,000万人のユーザーが存在していた状況から考えると、サービスが終了してしまった現状はよく理解できませんが、このようにmixi・DeNA・GREEといった国産SNSがなぜか失速してしまったことが、LINEの独走を許す結果になったのは確かだと思われます。

理由の四つ目は、海外製のアプリであるFacebook Messenger・カカオトーク・WhatsApp・WeChatなどがそこまで振るわなかったことが挙げられると思います。

理由の五つ目は、LINEは韓国企業の日本法人が運営していたにも関わらず、国産というイメージ戦略を展開したことも挙げられると思います。

LINEは当初から国産だとアピールしていましたが、例えばトヨタの車は世界のどこで生産されていても日本産とみなされているはずであり、同じように韓国企業のブランドであっても特に問題ないはずですが、なぜか国産であるというイメージ戦略を展開し、またDeNAでSHOWROOMの代表を務めていた前田裕二氏が、著書でLINEのことを国産と言及するなど、外部の人間を使ったイメージ戦略が日本で浸透していったことが理由として挙げられると思います。

理由の六つ目は、日本で発売されたiPhoneに、当初ショートメール機能が付いていなかったことが挙げられると思います。

日本でiPhoneを独占販売していたソフトバンクは、2008年7月11日にiPhone 3Gを発売しましたが、当初ショートメール機能が使えませんでした。

理由の七つ目は、LINEのサービス開始が、東日本大震災のすぐ後だったことが挙げられると思います。

巨大な地震と津波によって壊滅させられた被災地では、家族の居場所や安否の確認で、体育館などの貼り紙を必死に探す人たちの映像がメディアで盛んに報道されました。

これを見た多くの人は、事前に家族としっかり繋がっておこう、友だちと繋がっておこうという気持ちが働いたと思います。

東日本大震災が発生した2011年当時、携帯電話所有者のうちのスマホ利用率は20%前後であり、これからスマホが本格的に普及していく過程において、巨大な地震と津波が日本を襲い、多くの人々が繋がりを求める中で、メッセージアプリとしてのLINEが認知され、またダウンロードされていったと思われます。

このようにLINEは、東日本大震災のすぐ後にサービスを開始したため、日本で普及していったと考えられます。

以上のように日本でLINEが普及した理由は、キャリアが違った場合のショートメールのやり取りがなぜか日本ではできなかったことや、厚労省のおかしな優遇対応や、日本製アプリや海外製アプリが振るわなかったことや、国産であることを装ったイメージ戦略や、ソフトバンクが独占販売していた人気のiPhoneに当初ショートメール機能がなかったことや、サービスの開始が大震災の直後であったことなどが挙げられると思います。

他にも、LINEスタンプや、可愛らしいクマやうさぎのキャラクターや、日本人に馴染みのあるお茶や新緑の緑を使った企業カラーなども普及した要因としてあると思いますが、一番はやはり、サービス開始のタイミングが、日本中の人々が繋がりを求めた東日本大震災のすぐ後であったことが大きかったと思います。


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