2018/04/27

勇気と冒険心を与えてくれるいくつもの名言



燃え上がる炎


Samuele SchiròによるPixabayからの画像 



自分の定めた目標に向かい、一心不乱に突き進んでいても、到達点が遥か先で、途中で息切れしてしまうこともあるでしょう。

自分の歩んでいる道が、間違っているのではないかと疑うこともあるかもしれません。

周囲から、いい加減に目を覚ましたらどうだ、と言われている人もいるかもしれません。

大きな障害が立ち塞がり、右往左往している人もいるでしょう。


「千里の道も一歩から」

「ローマは一日にして成らず」


といった格言を心の支えにしたとしても、途中で立ち往生してしまうことがあるかもしれません。

そんなときは一度休みましょう。

過去にテレビ放送されていたアニメ、一休さんの名ゼリフ、


「あわてない、あわてない、ひとやすみ、ひとやすみ」


を口に出し、今から紹介する言葉を眺めてください。


それは王陽明の詩・啾啾吟(しゅうしゅうぎん)です。


明の政治家・王陽明が唱えた陽明学は、移植された日本の土壌で独自の発展を遂げました。

特に、知識は行為によって完成するとした「知行合一(ちこうごういつ)」のテーゼが重視され、市民の困窮から江戸幕府に反旗を翻した大塩平八郎や、幕末では佐久間象山をはじめとした志士たちに多大な影響を与えました。

そのため、陽明学を過激な革命思想と捉える向きもありますが、この詩はそのような激烈さとは異なった内容で、王陽明本人に謀反の疑いが掛けられたときに詠まれたとされています。


原漢文


知者不惑仁不憂

君胡戚威眉双愁

信歩行来皆坦道

憑天判下非人謀

用之則行舎則休

此身浩蕩浮虚舟

丈夫落落掀天地

豈顧束縛如窮囚

千金之珠弾鳥雀

掘土何煩用鐲鏤

君不見東家老翁防虎患

虎夜入室銜其頭

西家児童不識虎

執竿駆虎如駆牛

痴人懲噎遂廃食

愚者畏溺先自投

人生達命自灑落

憂讒避毀徒啾啾



書き下し文


知者は惑わず 仁(者)は憂えず

君なんぞ戚々として 眉雙を愁う

歩にまかせて行来すれば 皆坦道

天によりて判下す 人謀に非ず

之を用ふれば則ち行き 舎つれば即ち休す

此の身浩蕩 虚舟浮かぶ

丈夫は落々 天地をあぐ

あに束縛を顧みて 窮囚の如くならんや

千金の珠 鳥雀を弾たんや

土を掘るに 何ぞ鐲鏤を用ふるを煩はさん

君見ずや東家の老翁 虎患を防ぐも

虎夜室に入りて其の頭を噛む

西家の児童は虎を識らず

竿を執りて虎を駆ること 牛を駆るが如し

痴人は噎に懲りて遂に食を廃し

愚者は溺を畏れて先ず自ら投ず

人生 命に達すれば 自ずから灑落

讒を憂い 毀を避けて 徒に啾啾たらんや



現代語訳


孔子は「知者は惑わず、仁者は憂えず」と言っているが、君はなぜそんなに眉をひそめ、くよくよと愁えているのか。

世の中は信ずる所に従って歩いていけば、皆平坦な道である。

結果は天によって判定されるもので、人間の思惑だけで決まるものではない。

もし世間から認められて用いられるならば、出て行って働けばよい。

理解されなくて用いられぬ時は、休みつつ自らを養っておけばよい。

この身は、果てしなき大海原に浮かぶ無人の小舟のようなものである。

丈夫は天地を持ち上げるほどの力を持っているではないか。

何も牢獄に押し込められた囚人のようにしていることはない。

雀を撃つのに千金の弾を使う必要はない。

土を掘るのに古今の名刀を用いなくてもよい。

君は知らぬか。東の家の爺さんが虎からの危害を防ぐため、柵を作るなど防御していたにも関わらず、夜に虎が部屋に入り、爺さんの頭に咬みついたのを。

ところが、西の家の子供は虎の恐ろしさ知らなかったため、虎が来たときに牛を追うように物干し竿で追い払ったのを。

ある愚か者は、食べ物が喉に詰まったのに懲り、それ以降一切の食事を止めてしまった。

またある愚か者は、水に溺れることを恐れるあまり、自分から飛び込んで死んでしまった。

何事も心配し過ぎると、こんなふうになるものだ。

人生というものは天命を知れば、大きな気持ちで物事にとらわれずに生きられるものである。

徒らに讒言(ざんげん)を気にしたり、誹(そし)りを避けようとして、嘆き悲しんで居られようか。


ここにあるのは、28歳で科挙の進士に乃第し、途中で左遷や牢獄に入れられながらも心身を練って生きてきた、士大夫の腹の底から生み出された心境で、観念の遊戯ではありません。

この啾々吟の啾々(しゅうしゅう)とは、小声で弱弱しく泣く様であり、この詩の大意を私なりに記すと、


自分が信じて選んだ道は、どんな行路でも道である。

眉をしかめて愁うことなく、少しずつ着実に歩いて行こうじゃないか。

物事の成否は、人間の与り知らぬ処にある。

心配ばかりしても仕方がないだろう。

他人の評価を気に病み、しくしく嘆き悲しんでは居られない。


このような感じでしょうか。

悠久の天地に生きる有限の存在である人間を、温かい目で包み込んでいます。

自分の歩んでいる道に疑問を感じたり、疲れてしまった人たちに噛み締めてほしい詩です。

そしてひと休みしたら、再び立ち上がりましょう。


ここからは、己の魂を鼓舞する言葉を紹介します。

そしてもし目の前に強敵が立ち塞がり、心身に深い傷を負ったならば、傷口にこれらの名言を擦り込んでください。



一歩を踏み出せるなら もう一歩も踏み出せる

If you can take one step, you can take one more.



アメリカのロッククライマー トッド・スキナー

出典 頂上の彼方へ NHK出版



勝利は戦う人の上にこそあれ

独り往く勇気より大なるはなし


魂の大患とは熱を失うことである


フランスの政治家 ジョルジュ・クレマンソー

出典 世紀の遺書 巣鴨遺書編纂会 講談社



あきらめないこと。どんな事態に直面してもあきらめないこと。結局、私のしたことは、それだけのことだったのかもしれない


日本の冒険家・植村直己

出典 北極点グリーンランド単独行 文春文庫



あまりにも残酷な

取り返しのつかぬ現実に

苦しみながらも、私は

生きぬかねばならない

近く終わるであろう事を察しながら

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