大東亜戦争で徹底的に敗れた日本は、戦後アメリカの庇護のもと、大量のアメリカ文化を受け入れて育ちました。
ハリウッド映画はその尖鋭としての役割を担い、自由で豊かなアメリカを日本国民は見せつけられてきました。
そのため戦後の日本では、無条件にアメリカ文化を賛美する風潮が色濃く存在していますが、それらを抜きにしても、本作は青春映画の王道と言える作品でしょう。
内容は、アメリカ海軍の航空士官養成学校に、リチャード・ギアら候補生が入学し、紆余曲折を経て卒業するまでの話です。
なんといっても、若かりしリチャード・ギアが、生い立ちに葛藤を抱えた不良を好演しています。
本作には、影のある魅力的な主人公の他に、試練、忍耐、友情、死、成長、師弟関係、男女の駆け引き、成り上がり、玉の輿など、観るものを惹き付ける要素がぎっしりと詰まっています。
また、本作のあがりであるジェット機のパイロットに魅力を感じるのは、人間にとって不可能な、飛ぶことへの憧れからきているのでしょうか?
ちなみに、「愛と青春の旅立ち」という邦画タイトルは、クサイと言えなくもないですが、これ以上ないほど内容と合致しています。
本作の洋画タイトルは「An Officer and a Gentleman」であり、直訳すると「士官と紳士」になります。
その意味は、士官や紳士に相応しくない行為は罰せられると記載された、アメリカ軍の統一軍事裁判法133条「Conduct unbecoming an officer and a gentleman」からきています。
つまり、娼婦に囲まれて育ち、肩に刺青を彫り、教官に隠れて小遣い稼ぎをするようなチンピラ主人公ザック・メイヨが、一端(いっぱし)の男になれるのか? を意味しています。
このように、洋画と邦画でタイトルが違うことは良くありますが、外国人と映画の話をするときに意志の疎通が図れません。
有名な空手映画である「ベストキッド」の洋画タイトルは、そのまんま「The Karate Kid 」です。
なぜ邦画のタイトルがカラテからベストに変わったのか知りませんが、昔アメリカ人と映画の話をしていたとき、通じなくて困ったことがありました。
今はスマホで調べれば簡単に分かりますが、昔はそうはいきませんでした。
多くの邦画タイトルが違うのは、配給会社の思惑があるのでしょうが、製作者の意図が曲げられてしまいます。
しかし、公開する国によって結末が変えられる、極端な商業主義的な作品を考えれば、許容できる範囲と言えるのかもしれません。
小説と映画の結末が違うこともよくありますが、こちらは別の作品であると捉える向きがあるかもしれません。
なお、本作の有名な結末は、リチャード・ギア以外に考えられないぐらい、はまっています。
こちらも有名である、楽曲「Up Where We Belong」とともに活写される最後の場面の愛と青春の旅立ちは、観る者の胸に迫ります。
ハリウッド映画による政治的な思惑に関し、本作も存在するなどと言われておりますが、それらを抜きにしても、おすすめの青春映画だと思います。
まだ観ていない方は、是非ご覧ください。
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