これが江戸前の食べ方であり、社会に出てから恥をかかないように覚えておけと言われました。
店に愛想が尽きた
との意味になるから使用してはいけないことも教わりました。
鮨の歴史を紐解くと、江戸時代後期に誕生した握り寿司(江戸前鮨)は、一貫の大きさが今と違って二倍も三倍もあったため、箸では掴みにくく手で食べるものでした。
握りが小型化した現代において、大きさの点では箸で掴むのは簡単ですが、その場合、柔らかいシャリ(すし飯)が潰れたりネタが落ちたりすることもあるので、挟み方に気を付ける必要はあります。
また頑固な職人は、従来の作法である手で食べることを勧めます。
ただし、現在握りを手で食べている日本人は、一部の高級店を除けば、ほとんどいないと言ってもいいかもしれません。
あの世界一有名な鮨職人・小野二郎氏も、箸での挟み方に気を付ければ手を使わなくても良いと言っています。
それでも私は、最近はそれほどでもありませんが、手に魚の匂いがついてしまうものの基本は手で食べるようにしています。
その理由は掴みやすいからと、さらには、ひっくり返して食べるのが箸よりも簡単だからです。
では、握りをひっくり返して口に運ぶことは、正しい食べ方なのでしょうか?
二郎氏は、この食べ方を勧めていません。
その理由は、酢めしが人肌の温度になっており、舌に違和感がなく、ひっくり返さなくても普通に美味しく食べられるからだとしています。
私はすきやばし次郎で鮨を食べたことがないので断言できませんが、小野二郎氏が本物の鮨職人であることは、衆目の一致するところです。
しかし、私に握りをひっくり返して食べろと教えてくれた頑固親父も、間違いなく本物の鮨職人でした。
握りを逆さにして口に運び、そこから噛み砕くメリットは、味覚を感じ取る舌が、シャリではなく味のあるネタを中心にして、そこから調和のとれた旨味が口に広がっていくことです。
握りを口の中で潰したとき、ネタが中心の方が美味しいのか、シャリが中心の方が美味しいのか、どのみち混ざるから同じであり、こだわる必要はないものかどうか分かりませんが、裏返して食べた方が美味しいのではないかと思います。
また、ひっくり返すと、醤油をネタにつけやすいからでもあります。
このように握り鮨の食べ方は、個人の嗜好で異なる部分もありますが、一方でどのお寿司さんでもやめた方がいい行為があります。
1つ目は、醤油をネタではなくシャリにつけることです。
その理由は、醤油をシャリに浸すと、シャリ(酢飯)の味が台無しになることと、繊細なシャリが潰れてしまうからです。
そもそも本来の江戸前鮨は、ネタにひと仕事がしてあり、醤油(むらさき)を付けなくても美味しく食べれるようになっています。
ですから、それでも醤油をつける場合は、ガリに醤油をつけ、刷毛(ハケ)変わりにネタに塗るのが正しいとされています。
2つ目は、ネタを剥がして食べることです。
握り鮨は、ネタとシャリの調和こそ職人の腕の見せどころであり、別々にして食べることは職人の努力を無にしてしまいます。
3つ目は、ちぎって食べることです。
握りは、その大きさが1口で美味しく食べられるよう計算されており、またちぎることは美しい作法とは言えません。
女性でも1口でカブリといくべきです。
きめ細かな職人であれば、女性がお客さんの場合、小ぶりにして出してくれるはずで、もし配慮してくれなければ、小さくして欲しいと伝えていいかもしれません。
以上、握り寿司の正しいとされる食べ方を考察してきましたが、他にも作法として、強い香水をつけてはいけないなどがあり、これら細かい決まりごとのため、カウンターのあるお寿司屋さんが敬遠されていることも事実でしょう。
本来、他人に迷惑を掛けなければ、どんな食べ方をしてもいいはずです。
しかしその一方で、受け継がれてきた民族の食文化を、正確に次世代へ伝えていくことも大切です。
もはや、世界的な用語であるSUSHIの作法について、発祥元の日本人が知らなければ、海外で恥をかくことがあります。
お寿司の提供方法や食べ方は、時代の要請や制約と共に変化をしています。
そのため、現在の寿司という食の伝統文化を、固陋な慣習として縛りつけておく必要はありませんが、現在の形には、それなりの合理的な一面があるはずです。
そしてさらには、伝統文化を創造的進化へ発展させていくには、現在の形を正確に把握する必要があるでしょう。
お寿司の提供方法や食べ方は、時代の要請や制約と共に変化をしています。
そのため、現在の寿司という食の伝統文化を、固陋な慣習として縛りつけておく必要はありませんが、現在の形には、それなりの合理的な一面があるはずです。
そしてさらには、伝統文化を創造的進化へ発展させていくには、現在の形を正確に把握する必要があるでしょう。
そのため、すきやばし次郎とはいかなくても、手頃な価格で美味しい鮨を提供しているお店はいくらでもありますので、バラエティ豊かで楽しめる回転寿司もいいですが、ときにはカウンターのあるお寿司屋さんの暖簾を潜り、日本の食文化を体感し、大いに議論し、盛り上げていくべきでしょう。
そうすることで、アメリカで見かける、アボガドなどをネタとした巻き寿司に似たカリフォルニアロールや、スパイスで味付けしたハムと言われるスパム寿司(スパムむすび)など、他国で広がった寿司文化についての理解も、深まるかもしれません。
そして世のお父さんお母さん方は、子供が大人になる前にカウンターのあるお寿司屋さんに連れていき、日本の寿司文化の今を、作法と共に教えてあげるべきでしょう。
ただし、今の若い子供たちの一定数は、他人が手で握ったおにぎりを不衛生との理由で食べられないそうですので、鮨職人が手で握ったお寿司も、食べられないと言うのかもしれません。
このあたりは、衛生意識の高まりや職人のプロ意識にも関連してくる話であり、今後の鮨文化が変わってくる可能性もあるかもしれませんが、海外で日本の食べ方を聞かれた時に困らないように、少なくとも一定の作法を理解し、自分なりの意見を持てるよう促してあげるべきでしょう。
すきやばし次郎が奨励する鮨の作法を以下に紹介しておきますので、参考にしてください。
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