2017/04/08

死の恐怖を感じるバンジージャンプから得られるもの 勇気とその先にある自分




茨城県・竜神大吊橋でのバンジージャンプ

サンサンさんによる写真ACからの写真



「怖いもの見たさ」

という心理が人間にはあります。

これは、人間が持つ好奇心などで説明できますが、「怖いもの見たさ」と聞いて私が思い出すのは、小学生のとき、皆で放課後に集まってコックリさんをしたり、夏の夜に怪談話をした事かもしれません。

今回はバンジージャンプの話です。私は東京都稲城市のよみうりランドで行ったのですが、この時の動機は、純粋な好奇心からと、飛んだ後の自分の変化を知りたかったからでしょうか。

バンジージャンプの起源は、ニューカレドニアの北に位置するバツアヌ共和国で行われている、木で組み上げた高いやぐらから命綱のツタを足にくくりつけて飛び降りるナゴール(Naghol)から来ています。

ナゴルは、翌年の山芋の豊作を祈る儀式ですが、少年の通過儀礼(イニシエーション)でもあります。

少年たちは、大人たちよりも低い位置から飛ぶのですが、このナゴルで少年たちは勇気を試され、飛ぶことができたら一人前の男として認められるというものです。

私が初めてバンジージャンプを体験したとき、上の飛ぶ位置まで長い鉄骨の階段を上っていき、てっぺんから下を覗いたとき、背筋がゾーと凍りました。

これは、自己の生命が脅かされ、防衛本能が発動したことによる恐怖ですから、厳密には弱い心とは言えないかもしれませんが、この恐怖を克服するには勇気が要ります。

そして、人生での困難や危機を乗り越えるには勇気が必要です。

話は変わりますが、第二次世界大戦の終結後、ジャングルで30年も戦っていた軍人の小野田寛郎氏が提唱する教育法として、自分の弱さと強さを感じさせるために行っていたキャンプでのカリキュラムがあります。

それは、暗闇の山道を子供たちに歩かせるというものです。

真っ暗な森の中で、小さな光を目印に歩いていくのですが、辺りは何も見えないため、大人でも怖さを感じます。

この怖さは、普段人間が得ている情報の8割から9割が視覚によるものだからです。

いつも頼りにしている視覚からの情報が遮断されれば、当然怖さを感じますが、時間が経つと聴覚や触覚など他の五感が働くようになり、また暗闇で瞳孔が開いてくると、周りのものが見えてくるようになります。

このように暗闇の山道を歩くことで、まずは人間の持つ弱さを感じさせ、そして勇気を振り絞って進むにつれ、徐々に慣れていくことで強さを獲得していくプログラムを生前の小野田氏は思いつき、自然塾で行っていました。

これを一歩進め、死の恐怖という人間の持つ弱さを認識し、それを克服する勇気を試す機会ともなるバンジージャンプは、若いうちに挑戦してみる価値があります。

ではここで、勇気に関する名言を幾つか挙げてみます。



富を失うものは、多くを失う。
友人を失う者は、さらに多くを失う。
しかし、勇気を失う者は、全てを失う。


He who loses wealth loses much; he who loses a friend loses more; but he that loses his courage loses all.

ミゲル・デ・セルバンテス(スペインの作家)



もしも、この世に喜びしかなければ、私たちは決して、勇気と忍耐を学ばないでしょう。

We could never learn to be brave and patient, if there were only joy in the world.

ヘレン・ケラー(アメリカの盲ろう者)



勇気がなければ、他のすべての資質は意味をなさない。

Without courage all other virtues lose their meaning.

ウィンストン・チャーチル(イギリスの政治家)



人は何度やりそこなっても、「もういっぺん」の勇気を失わなければ、必ずものになる。

松下幸之助(日本の実業家)



バンジージャンプを試すことで、死ぬかもしれない恐怖を体験し、自分の弱い心を知り、勇気を出してその恐怖を克服し、実際に飛べれば、自己肯定感が育まれるでしょう。

たとえ直前にやめたとしても、死ぬかもしれない恐怖を経験できたことは、必ず活きてくるはずです。

人生には数々の恐怖が襲ってきます。

そのときに、事前に大きな恐怖を経験しておけば、いくぶん対処がしやすくなるはずです。

また、直前に尻込みして飛ぶのを中止したとしても、その自らの弱さを認めたとき、それは強さに変わります。

そして一番大事なことは、死を自覚することは、生を自覚することだからです。

生と死は表裏一体で、一如(いちにょ)の関係です。

戸塚ヨットスクールで知られる戸塚宏氏は、脳幹トレーニングという方法で、数多くの情緒障害児を社会復帰させてきました。

その方法とは、質の高い不快感を与える、つまり生死に関わる体験をさせ、人間の生命維持機能を司る脳幹を鍛え、生きる力を回復させるものです。

やり方は簡単で、ただプールや海に板を浮かべ、その上で子供を遊ばせるだけです。

落ちたら窒息して死ぬかもしれない恐怖が、生きる本能を呼び覚ますというものです。

不幸にも訓練生が亡くなる事故があり、その手法に批判もありますが、戸塚氏はこの方法で、非行、不登校、家庭内暴力を起こす子供たちを再生させてきました。

同じように、生きるチカラを呼び覚ます方法として、死を身近に感じるバンジージャンプを試してみる価値があると思います。

もし可能であれば、バンジージャンプよりも、崖から海に飛び込むほうが、より強烈に死と生を感じられるでしょう。

私には怖くてできませんが、命綱なしで、高い崖から海に飛び込むコンテストがあります。

レッドブルが主催するクリフダイビングという競技です。

2016年には、和歌山県にある白浜の三段壁で実施されました。







mr93さんによる写真ACからの写真


この競技は、崖の上から命綱なしで飛び込むのですが、実際人生にも命綱があるようでありません。

地域の共同体は崩壊し、最後のセーフティネットである生活保護の受給は簡単ではなく、一度ホームレスに転落すると住所がないために仕事も探せず、なかなか這い上がれなくなります。


このように、命綱のない人生を渡っていくために、勇気や生きる力を養わなければなりません。

そのため、若いうちや大人になってからも、死の恐怖を体感し、その恐怖を勇気で克服する鍛練のようなバンジージャンプなどによって、生きる力を養っていくことが重要だと思います。


ただし、万が一の危険があることも必ず教え、またそれとは別に、人間が生きるということは、常に何らかのリスクが存在することも教えてあげるべきでしょう。




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