2019/02/01

子どもの知的好奇心をくすぐってくれる宇宙人を科学的に考えてみます




如月ガラスさんによるイラストACからのイラスト 



先日とある本屋さんを訪れたときのこと、 入口の目立つ売り場に、その店の売れ筋ランキングが紹介されていました。

1位は、発売前からAmazonのトップを独走していた話題作・百田尚樹氏の「日本国紀」でした。

本書のトンデモぶりはここで列記するまでもありませんが、一例を挙げると、男系天皇とは父親が天皇のことを指す、と基本的なことすら間違っている、歴史書の体すら成していない本です。

そんな本にも関わらず、紹介文には、


神話とともに誕生し、万世一系の天皇を中心に、独自の発展を遂げてきた、私たちの国・日本。


紹介文引用


と堂々と謳われており、さらにはそんな知識すら持ち合わせていない著者が、


私たちは何者なのかー。


と読者に問い掛けているコントのような本であり、それにも関わらず売れているようであり、 私が訪れた本屋も例外ではなかったようです。

話題性から興味を引かれ、思わず手に取ってしまうのも分かりますが、この書店には他に読むべき素晴らしい本が置いてあるはずなのに、何だかなぁと思いましたが、そこにあるランキングの二位を見て私は嬉しくなりました。

そこに掲げられていた作品は、 小学生に人気の科学漫画・サバイバルシリーズの最新刊でした。

サバイバルシリーズは、漫画とは言うものの漫画であるがゆえに理解しやすく、また所々に文章中心のページが存在しているため、子供の知的好奇心を育みつつ、読書の面白さに目を開かせてくれる構成となっています。

敢えて注文を挙げるとすれば、主人公を日本の少年にしてほしかったぐらいで、楽しく科学を学ぶにはうってつけの教材です。


私も息子の本を借りて学ぶことも多く、次にどんなシリーズが出版されるか楽しみにしているぐらいです。

日本が今後も科学技術立国を目指していくならば、このような草の根から裾野を広げていくより他なく、そんな本が町の本屋ランキング上位に食い込んでいる状況を見て、まだまだ日本も捨てたものじゃないと思いました。

その本屋があった商業ビルは、都内でも人気の高い街にあり、住んでいる家族の教育意識も高いのだと推察されました。

今後もこのシリーズは続いていくと思いますが、是非とも取り上げて欲しい題材がひとつあります。


それは、地球外知的生命体についてです。


宇宙人と聞くと、何やらオカルトを連想してしまうかもしれませんが、エイリアンやUFOは、未知のものに対する興味、つまり好奇心の向かう最たるものです。

私の少年時代には、漫画・週刊少年マガジンの「MMRーマガジンミステリー調査班」や、雑誌・ムーが流行っており、UFO研究の第一人者であった矢追純一氏も人気がありました。

ただ、時としてこれらは内容がエスカレートすると、それこそトンデモになってしまい、科学とはかけ離れてしまいます。

そのためにここで重要なのは、科学的な考証を中心とした宇宙人の話です。

現代は、多くの宇宙飛行士が世界中で誕生し、月旅行も次々と計画され、1977年に打ち上げられたNASAの惑星探査機ボイジャーが、太陽系の圏外へ飛び出してその先へと進んでいるぐらい宇宙が身近になっており、JAXAのホームページにも、微生物のような生物はいるかもしれないと記されているほどです。

一般に生命が生存できる環境とは、水が液体として存在可能な領域、いわゆるハビタブル・ゾーンとして知られています。

なぜ液体の水が必要なのかは、生命の活動とは、数々の化学反応によって引き起こされており、その反応は物質を溶かすことのできる水の中で行われ、またそこで生じた有機化合物や老廃物の運搬に水が使われているからです。

物質の状態が固体だと化学反応が進みにくく、気体だと拡散してしまうため、液体としての水が生命活動の維持に必要なのです。

この、水が液体として存在でき、生物が棲みかとして永続できるハビタブル・ゾーンの成立条件は幾つかあります。

まず重要なのが、惑星の軌道中心にある恒星の明るさ、寿命、そして距離ですが、他にも、惑星の大きさや岩石型が望ましいといった惑星そのものの状態や、その惑星が属する銀河のどこに位置しているかなども関係しています。

では、この宇宙にどれだけのハビタブルゾーンが存在しているかですが、2009年にNASAによって打ち上げられ、2018年に探査を終えた高性能のケプラー宇宙船は、2343個もの太陽系外惑星を観測し、その中には、地表に水が存在すると考えられる、地球と同じ岩石型の惑星を幾つも発見しています。

ひと昔は、この広い宇宙に存在する知的生命体は、もしかしたら人間しかいないなどと囁かれていましたが、そうではない可能性が俄然高まっています。

ただし、生命が自然発生的に誕生することは限りなくゼロに近いのは事実です。

また、地球上に存在するすべての生物は、遺伝情報の保存にDNA(デオキシリボ核酸)を用い、遺伝情報の伝達にはRNA(リボ核酸)を用いており、さらには活動のためのエネルギーをATP(アデノシン三リン酸)によってまかなっていますが、これらの分子には、地球上は疎か(おろか)宇宙にも欠乏するリン酸を必要としています。

地球上には、見つかっているだけでも約175万種と実に多種多様な生物が存在し、高温、極寒、高圧、強酸など極限の環境を棲みかとする生き物もいますが、そのすべてが同じ原理で動き、しかもふんだんにない元素を必要としているのです。

これらを考慮すると、やはりヒトは宇宙で孤独な存在なのかもしれません。

しかし、この広大な宇宙には、JAXAによると少なくとも2000億個✕1000億個以上の恒星があると言われており、まさに天文学的な数字です。

その中には、地球と同じ運命を辿る惑星が存在していても不思議ではありません。

またこの広い宇宙には、H2Oではない液体で物質をやり取りする生命が存在する可能性もあり、土星の衛星タイタンでは、液体のメタンやエタンを使用した生命の存在も考えられています。

さらにはゼロベースで思考してみると、地球とは全く違う形で生命が誕生し、液体を必要としない、全く違う構造を持つ生命が存在することもありえます。

我々が宇宙人と聞くと、記事の冒頭で使用した画像のアールグレイ型を想像してしまいますが、それは単なる先入観でしかありません。

この広い宇宙には、代謝や自己複製を行わない高等生物が存在しているかもしれません。

地球上においても、まだまだ未知の生物が存在し、その構造が明らかにされていないものもあるでしょう。

アフリカに生息する昆虫・ネムリユスリカの幼虫は、宇宙空間という極限状態でも生存できます。

乾燥状態にし、二年半もの期間宇宙空間に曝したにも関わらず、地球に帰還した後、水で戻したら生き返ったのです。

宇宙空間とは、日向は高温で、日陰は極寒で、太陽から放たれる太陽宇宙線や、太陽系外から放たれる銀河宇宙線が飛び交う高放射線環境下にあり、人間の細胞は容易に破壊されてしまうため、無防備での滞在など到底できません。

しかし、そのような環境に耐えられる生物が地球上に存在するのです。

地球にこのような生物が存在するならば、宇宙にいても不思議ではありません。

また、人間を含めたほぼすべての地球上の生物は、太陽という恒星から放たれる光エネルギーによって代謝を行い、生命を維持しています。

これも、広い宇宙においては、光や熱エネルギーではない別のエネルギー源を使用している可能性も排除してはならず、進化という概念すらも疑ってかかるべきなのかもしれません。

宇宙人について、これらエネルギー源、進化、生殖や自己複製といった生命の根幹を抜きに考察すると、それは科学ではなくなってしまいますが、人類が取り扱う科学では、宇宙を生み出した元の始まりや宇宙の果ては、どうあがいても理解も解明もできません。

よって、科学をベースに置きながらも、すべての枠を取っ払って生命を考察し、そこから地球外知的生命体を想像してみる必要があるでしょう。

そして、子供達が科学的に未知との遭遇を考えることは、それこそ人間とは何かを考えるきっかけとなり、それは人生とは何かを考えることにも繋がり、自分の人生をいかに生きていくかを考えることにも繋がっていくでしょう。



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